何もない? いや、そこにはダムがある! カヌー体験から感じた移住前と後の気持ちの変化
- 2020.01.30
- written by 山本 卓

「山暮らしって遊ぶところがないんじゃないの?」
確かにカラオケもなければ、ボーリング場、遊園地もない。
娯楽施設なんて皆無。
いやいや! 実は遊べるところがあるんです!
それはどこかって?
佐賀のお山にはダムがある!
そう! ダムがあれば遊べてしまうのです。
「カヌーって皆さんやったことありますか?」
なかなか体験する機会ってないのではないでしょうか。
僕は小さい頃に一度だけカヌーに乗ったことがあるぐらい。
あとはテレビ番組でユーコン川をカヌーに乗って制覇する旅番組を見たぐらいです。
カヌーの知識といえば、オールで漕ぐとカヌーが進む。この一点。
というわけで、今回はカヌー体験をしてきました!!
そして、カヌー体験を通して移住する前と後での気持ちの変化に気づくことができました。
カヌーは回るよ。メリーゴーランドのように

今回用意してくれたカヌーは2種類あって、
太くて安定するがスピードが出ないAパターン。
細くて不安定だがスピードが出るBバターン。
「先生! スピード出る方でお願いします!」
僕はBパターンをチョイス。
運動神経には少しばかり自信がありました。
だって学生時代はバスケ部副キャプテンでしたから!
甘く見ちゃいけないカヌーの世界

「右を漕いで左を漕いで。そうすればカヌーは前に進みます。」
カヌーの漕ぎ方も、ものすごく簡単。
あっという間にカヌーでダムを一周できてしまうんじゃないか?
そう考えていた僕はほんと甘かった。
あの青春ドラマ『ビーチボーイズの反町隆史さん』のような気分なりながら、さわやかに風を肩で切り、カヌーに乗り込み、
「いざ出発!!」
「右漕いで~左漕いで~右~左~右、左、左左左……先生! 全然前に進みません!」
自分の思い描く方向へ行かずに、ただその場をクルクルクルクルと回ってしまうありさま。
反町隆史さんのようなさわやかさは僕にはなかった。
なりたかったぁ…反町隆史さんのようなさわやかな男に (笑)
意外と難しいんですねカヌーって。今回参加した方の大半が初心者。
同じようにクルクル回る人続出。
丘で待機していた仲間からも
「メリーゴーランドじゃないんだから!」と突っ込みが。
おっしゃる通り。僕が乗っているのはカヌーです。
カヌーからの落下が、みんなを覚醒させた

数分経てば少しは慣れてくるもので、徐々にメリーゴーランド状態から解放。
風を感じながら自然の一部となった気分。湖の上でのカヌーは快感です。
みんなも思い思いにカヌーを漕ぎ進める。
みんなで記念撮影♪ そんな余裕も出てきました。
カヌーに乗り始めたころの緊張感も落ち着き、
「これなら何かあっても少しぐらい濡れるだけで、カヌーから落ちないだろう」
と安心感が出てきました。
事件が起きたのはそんなとき。
「カヌーから落ちたぞ!」
先ほどまでの、ほのぼのムードから一転。湖の上には張り詰められる緊張感。
そりゃそうです。10月の終わりの佐賀の山は寒いのです。
声のする方向を見ると、そこにあるのは誰も乗っていないカヌーと脱げた靴だけ。
これは助けに行かなければ。漕ぎ出す一同。その姿はプロのカヌー選手のようです。
人って危機的状況に追い詰められると覚醒するんですね。
さっきまでメリーゴーランド状態だった仲間たちとは思えないスピードで漕ぎ出しているではありませんか?!
ものの数分で、落下した享平くんを救出し、落ちていた靴を拾い、無人となったカヌーを他の仲間のカヌーに結び付け岸に運ぶ。
その手際の良さと一致団結する力。落下をきっかけに覚醒する仲間たち。

岸に戻れてほんとによかった。
しかし、僕は気持ちとは裏腹に、クルクルメリーゴーランド状態続行中。
「だれか僕も岸に連れて帰って……」
移住の不安って自転車の補助輪みたいなもの。カヌー体験を通して感じたこと。

「移住する前って不安に思うことあった?」
そう聞かれて考えてみた。何が不安だったのか。
それは『自分は地域になじめるだろうか』ということ。
今回一緒にダムで遊ぼうと集まった人のほとんどが移住者だった。
20年以上住んでいるベテランから、移住2か月しか経っていない僕まで幅ひろく集まった。そんな生まれも育ちもバラバラな仲間たちがカヌー体験後に火を囲みながら、落下した話を共有し笑いあう。
落下した仲間の1人の享平くんも
「カメラ水没しちゃってたぶんダメですね。でもカヌーめちゃくちゃ楽しかったのでOKです。またみんなでカヌーやりましょうね」
と暖かいコーヒーを飲んで笑いあう。
この日誕生日だった堀さん。
彼女のためにサプライズの手作りケーキでお祝いをし、みんなでハッピーバースデーを歌う。

移住前に、いろいろな移住情報を調べている中で「移住先で人間関係に悩まされました」と、村八分にあった体験記事が目に入ることが多かった。
僕は、移住先で一人ぼっちになるんじゃないかって不安に思っていました。
だけど、今は「この場所に来てよかったな」って思える。
この“不安”って小学生の頃の自転車の補助輪を外した感覚と似ている。
不安を外せばこんな楽しい思い出ができる。
移住前の生活に不自由を感じていた訳ではなかった。
このまま生活が安定していればいい、そう思って過ごしていた。
だけど、何かが足りない。
そう思って、思い切って補助輪を外し、新しい場所に走り出してみた。
新しい土地に不安でグラグラもするけど、今はこうやってカヌー体験をしたり、一緒にドキドキしたり、笑いあったり、同じ時間を共有できる仲間に出会えた。
僕の移住生活は気持ちいい風を浴びながら前へ前へ進んでいる。
移住する前に感じていた不安は、今はない。
補助輪を外してみて初めて分かる、心地よさ。
それがこの佐賀の山にはあったのだ。
不安を無くす鍵は、仲間だったのだ。
移住を考えていて、その一歩を踏み出せない人。
もちろん、無理に移住はしなくてもいい。
だけど、その一歩を踏み出せば、新しい経験ができる。
うまく地域に溶け込めるのか?
考える前に補助輪を外して漕ぎ出してみれば、不安な気持ちは気持ちのいい風を浴びて吹き飛んでいく。
今回カヌー体験をキッカケに移住する前と後の気持ちの変化に気づいた僕でした。
皆さんも思い切って補助輪を外してみてはいかがでしょうか?
移住に関するお問い合わせ・相談はこちらまで。


<取材記者>
山本 卓
「佐賀のお山の100のしごと」記者/地域の編集者(地域おこし協力隊)
<取材記者>
山本 卓「佐賀のお山の100のしごと」記者/地域の編集者(地域おこし協力隊)
大阪府高槻市出身。10代のころから役者を志す。夢を叶えてCMや大河ドラマをはじめ映画や舞台で活動。劇団「ブラックロック」の主宰を経て、海外公演を自主企画で成功させる。その後、キー局情報番組のディレクターとして番組制作に携わる。夢は日本を動かした100人になること! 地域の人に密着した動画作成や、人の顔が見えるマップを作りたくて移住を決意

